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2018/02/01
レジオンドヌール勲章って、なんだか変... 」で書いたレジオンドヌール勲章をもらったフランスの友人は、少し浮世離れした人なので、叙勲式に招待されて行ったときには面白い話しを聞きました。

この勲章が「なんだか変」と思った続きを書きます。


フランスで勲章をもらうなら、自分で勲章を用意する

レジオンドヌール勲章は、それをすでにもらっている人が誰かに与えるということのようです。私の友人の場合は、もと大臣だった人が勲章を与えたという筋書きでした。叙勲式はパリ市庁舎で行われ、パリ市長がセレモニーを取り仕切っていましたが、友人の首に勲章をかけたのは元大臣だった人でした。

その元大臣は、友人の叙勲式が迫ったときに電話してきて、「ところで、きみ、勲章は用意してある?」と聞いたのだそう。

友人夫妻は、受賞する本人が自分で勲章を用意しておかないといけないのだと知って慌てたのでした。「もう1週間しかなかったのだから困るじゃないの。何処で勲章を買えば良いのか、私たちは知らないのだし」、と奥さんは笑いながら私に言いました。

でも、私でさえも、フランスで勲章をもらうときには、自分で勲章を用意することになっているのは知っていたのですけど...。

それを知ったのは、在日フランス企業で働いていたときでした。広報部長だったフランス人が、職業上で功績があったという勲章をもらうことになったのです。威勢の良い年配の女性だったので、「勲章は自分で買って用意しておかなければいけないのですって! とんでもないわよ~!」とオフィスで息まいていたのです。

友人が叙勲式に必要な勲章は持っていないと元大臣に答えると、彼は幾つも持っているので、1つあげると言ってくれたのだそう。それで、無事にセレモニーができた、ということだったのでした。

そういえば、似たような話しが日本でもありました。

結婚式をあげたカップル。当日の控室で、式を取り仕切る係の人から「結婚指輪をお預かりします」と言われたのだけれど、そんなものは用意していなかった二人。新婦の方は婚約指輪をもらっていたので、それを外して係の人に預け、それで指輪交換の儀式が筋書き通りにできたのでした。

日本では、婚約指輪を男性が相手の女性に渡すというのは普通にするけれど、結婚指輪をする人は少ないと思うので、当日用意していなかったというのは分かる気がします。

でも、考えれてみると、日本の結婚式で指輪交換をするのって奇妙ではないですか? 結婚指輪をしている日本人男性は見たことがないですもの。みなさん、セレモニーのためだけにご購入なさるのでしょうかね...。




それにしても、友人夫妻が勲章を自分で用意しなければいけないのを知らなかったというのは、腑に落ちませんでした。レジオンドヌール勲章は下のランクから順番にもらって昇格していくので、彼の場合は過去に2回の叙勲式を経験していたはずなのです。

知らなかったとしたら、前の2つの勲章をもらった時にはどうしていたのか不思議...。

別の友人に聞いてみたら、こういう場合は、たいてい友人たちなどがカンパして勲章をプレゼントするものなので、自分で買う必要があるとは思っていなかったのではないか、とのこと。レジオンドヌール勲章も3個目ともなったら珍しさがなくなって、彼の友人たちは心配してくれなかったかな?...

本人は当日初めて勲章を見る、というのもありえるかもしれない。私が行った受勲式では、ご本人が到着する前に会場に置いてありましたので。


レジオンドヌール勲章のお値段は?

そもそも、勲章をもらっていなくても買える、というのからして奇妙ではないですか? でも、パリを散策していたとき、勲章を売っている店を見かけたので、こういうところで買うのかなと思いました。



レジオンドヌール勲章であろうと、誰でも勲章は買えるけれど、それを付けて外出したり、悪用したりしないのなら、趣味で持つのは自由らしいです。

ところで、レジオンドヌール勲章のお値段はどのくらいなの? 勲章を扱うネットショップはありそうなので、友人がもらったコマンドゥール(3等)の勲章が幾らで売られているのか調べてみました。

この勲章に関するフランスの記事を読んでいたら、例えば造幣局で買えば良いと書いてありました。パリのセーヌ川の畔にあるパリ造幣局(Monnaie de Paris)の博物館のサイトを見たら、512ユーロで販売していました。7万円余りとは、かなりお高いのですね。

そんなお金は出せない人が受勲する時は、どうするのだろう? 結婚式に婚約指輪で指輪交換のセレモニーをするように、それらしきものを出して叙勲式ができるとは思えないけれど...。

他にもレジオンドヌール勲章を売っているサイトがあり、こちらでは同じものらしい純銀に金を施したコマンドゥールのメダルが395ユーロとなっていました。銅に金をほどこした勲章なら、265ユーロ。

銀のメダルにすることにした場合、5万円払うか、7万円払うかの違いがでます。その差額って何なのだろう? 同じものでも、造幣局では目いっぱいの価格で売っているということなのかな?...

ところで、この記事を書きながら、彼はその後にもう1つ上のグラントフィシエ(2等)に昇格していたのを知りました。そんな話は全く聞いていなかったので、共通の友達で、ニュースもしっかり読んでいるフランス人に聞いたのですが、知らなかったと言っていました。グラントフィシエといえば、もらえる人はかなり限られるのですが、そんなに大きくは報じられないのでしょうね。

上のランクになると、勲章のお値段も跳ね上がるのですね。友人が最近にもらったグラントフィシエは、フランス造幣局では1,190ユーロで販売していました。17万円ですよ~! もしも誰もプレゼントしてくれなかったら、彼は自分で買ったのかな?...

日本で天皇陛下から勲章をいただくときに、その勲章を自分で用意する必要があるということはないですよね? 私の父も何かの勲章をもらっていたので聞いてみたら、自分では用意しなかったと返事された気がします。

でも、父が受勲したら、色々な人に引き出物みたいなものを送っていたので、日本でも受勲にお金がかかるのは同じかもしれません。受勲するとなったら、大きなカタログが送られてきて、その中から引き出物を選んでいました。私にも、やたらに大きな置時計をくれましたが、嬉しくもない。3年くらいで壊れてしまったので、捨てました。


勲章には表と裏があった

ネットショップのサイトに入っている勲章の画像を眺めて、不思議に思ったことがありました。

前回の日記に入れるために、友人の叙勲式が始まる前に置かれていた勲章の写真をブログに入れるために加工したわけなのですが、気がついたことがあったのです。



濃紺のクッションに置いてあった勲章は、中央の部分が2つの旗を交差させてデザイン。ところが、ウエブに入っているコマンドゥール(3等)の勲章の画像は、中央の部分がフランスのシンボルであるマリアンヌらしき顔なのです。

Wikipediaに入っていた画像も、それでした。

Commandeur de l'Ordre de la Légion d'Honneur avers.jpg

2種類あるのかな? 元大臣がプレゼントしてくれたのは、ひょっとして偽物だったのではないかと疑ってしまいました。

価格を調べるために眺めたサイトでは、中央が違う勲章の写真が2つ入っていました。説明を読んだら納得。

この勲章の表面は、フランスの象徴マリアンヌの横顔の回りに「フランス共和国」と書かれてある。裏側は、2つのフランス国旗の回りに「名誉と祖国」の文字、その下に創設された年号として「29 floréal An X (1802年5月19日を意味する)」と刻まれているのでした。

勲章を首にかけた友人の姿を写した写真を眺めてみたら、マリアンヌの方の面が出ていました。叙勲式が終わった後に、一緒に行った友人が面白がって自分で勲章を首にかけて写真をとったりしていたのですが、誰かが「それでは裏返しだ」と言って直していたのを思い出しました。

としたら、セレモニーが始まる前には、裏側を表にしてクッションに置いていたことになります。なぜ? 市役所にはプロトコールの専門家がいるはずですから、間違えたとは思えない。

まだセレモニーの前だから、裏側を見せることになっているのかな?.... どうでも良いことですけど。


叙勲式は自分でオーガナイズするの?!

日本で天皇が行う勲章親授式は、春季と秋季に皇居で行われ、文化勲章は文化の日と決まっています。でも、レジオンドヌール勲章ではそうではないのでした。

Emperor Akihito Yoshiro Mori and Hideki Shirakawa


レジオンドヌール勲章の叙勲式は、ご本人がセレモニーを行う日や場所を決めることができるそうです。セレモニーで勲章を与える人を誰にするかには少し条件がありますが、列席者を選ぶのは自由なようです。

叙勲式は官報で発表されるので、その翌年に行うのが望ましいとのこと。外国人の場合は叙勲式を行わなくても良いとあるので、フランス人の場合はセレモニーを行うのが義務らしい。

勲章も買って、セレモニーやレセプションの会場まで決めなければまらいなんて、面倒くさいではないですか? 自分ですべてやったら、ますます勲章を「いただいた」という気分にはならないのでは?

ところで勲章ですが、軍人の場合は官報での発表後すぐに付けて歩いて良いけれど、それ以外の人は叙勲式が終わってからでないと付けてはいけないことになっているのだそうです。

レジオンドヌール勲章を叙勲した人は、レジオンドヌールのオルドル(騎士団)のメンバーになることができるわけですが、それの事務手続きの費用を負担しなければいけないようです。下の等級で50ユーロ、最高の等級で200ユーロ。


レジオンドヌール勲章をいただいたメリットは?

叙勲式が終わった後には、友人夫妻の家に来るように言われていました。それで会場を後にして、パリ市庁舎から出て道路に立つ。すると、彼らはバス乗り場に向かって歩き出し、バスで帰宅したのでした。

こんな権威がある勲章の授章式をオーガナイズしていたのはパリ市だと思っていたので、お車を用意しなかったのかと少しおどろきました。友人夫妻も、セレモニーで疲れたからタクシーで帰ろうとしなかったのも不思議。彼らのマンションは、会場だったパリ市庁舎に近い地域にあるので、タクシー代を節約するほどのこともなかったのです。

帰宅したら、友人は無造作に勲章を玄関の下駄箱の上に置きました。その翌日も遊びに行ったのですが、勲章はまだそのまま。レジオンドヌール勲章を辞退はしなかったけれど、私の友達は受勲を特別なことだとは思っていなかったのでしょうね。

叙勲式から帰って、彼らの家で寛いでおしゃべりをしたとき、レジオンドヌール勲章が役にたつのは旅行するときだなのだ、と友人は笑いながら話していました。

フランスで交通違反の取り締まりをしているのは、都市ではポリスと呼ぶ警官ですが、地方では地方警察官。地方警察官は、軍隊に属しているの人たちです。レジオンドヌール勲章は本来は軍人に与えるためにできたものなので、地方警察官たちにとっては、この勲章をもらった人は自分たちのお仲間だ、という意識があるのだそうです。

友人が旅行するときには、車のグローブ・ボックスにレジオンドヌール勲章を入れておくことにしている、と話しました。スピード違反をしてつかまったときに、ちらりと見せる。すると、警察官は尊敬のまなざしで見てくれて、交通法規違反なんかは見逃してくれるのだそうです。彼だったら、ひょうきんな顔をして、そんなことをやってしまうかな...。

これも日本で聞いたことがあるお話しだと思ったのですが、「この紋所が目に入らぬか!?」というのと同じ効果があるというわけですか...。


それを私の友人が思いついたとも思えない。ひょっとしたら、フランスのレジオンドヌール勲章をもらったお仲間たちはよくやっているから、彼に教えてくれたのではないでしょうか?

追記(2018年2月)
勲章には全く興味がない私なのですが、書き出してしまうと疑問が次々と浮かんでくる。

ナポレオン1世がレジオンドヌール勲章を創設した時、彼は勲章を軍人だけに与えたのだろうと思ったのですが、そうでもないのでした。社会に貢献した評価した医師、企業家、芸術家などにも勲章を与えていました。フランス第二帝政になるまでの時期に、受勲者に占める軍人は75%だったそうです。その後、軍人以外の受勲者の割合は増えて、パーセンテージは逆転しましたが。


書きながら調べてみたら、このレジオンドヌール勲章をいただいた(買った?)のは名誉だと思って喜ぶなら良いけれど、実質的なメリットはほとんど無いようなのでした。ノーベル賞を受賞すれば1億円くらいの賞金をいただけますが、レジオンドヌール勲章でもらえるお金はゼロに等しいそうです。

レジオンドヌール勲章でも年金支給があって、いちおう等級が上がるにつれて高くなります。

でも、最低ランクのシュヴァリエで、年に6.10ユーロ(約850円)。フランス大統領にでもならないともらえない、最高ランクのグランクロワでさえも36.59ユーロ(約5,000円)。こんな形だけの恩給なんて廃止すべきだと主張する人たちがいるそうです。支払いに手間がかかるだけなので、止めた方が良い、と私も思いますね...。


レジオンドヌール受勲者の娘たちだけが入学できる学校

レジオンドヌールの受勲者にとって、何かメリットがあるのかを調べていたら、そういう学校があるのを知りました。Maison d'éducation de la Légion d'honneur(「レジオンドヌール教育の館」と訳す?)という名前で、中等教育と高等教育が行われる学校でした。

学校の創設者は、レジオンドヌール勲章をつくったナポレオン1世。レジオンドヌールを受勲した軍人の娘、孫、ひ孫の女の子で、孤児だったり、貧しかったりしても教育を受けられるように、というのが目的で作られた学校だそうです。なぜ女子だけなのか気になりますが、男の子の方は何とかなるからなのでしょうね。

ナポレオンは戦争ばかりしていて、大量の戦死者を出したためにフランスを人口危機に貶め、戦争で使うために農耕馬を没収して農業を危機にもした人なわけです。軍人を死なせてしまうけれど、遺族の面倒はみるのだ、とアピールすることを考えたのでしょうね。

レジオンドヌール勲章をもらった人の3世代の女の子が入学できる学校は、今でも非常に高度な教育が行われている公立学校なので、受勲の特典と言えるようです。入学できる人数は限られているようですが。

この学校出身のマドモアゼル達のバカロレア(大学入学資格試験)合格率は100%、その半分以上は最優秀の評価を獲得していうというので、教育レベルの高さはうかがわれます。音楽などカルチャーの授業にも力を入れているのだそう。

この学校の生徒は、全員が寄宿生活をします。生徒たちは学年によって色分けされた襷(たすき)を付けた制服を着ていて、軍人さんの学校の雰囲気に見えてしました。

学校の様子を見せるテレビ番組があったので入れておきます。もっと長いルポルタージュは、情報リンクのYouTubeをご覧ください。


Les Demoiselles de la Légion d'honneur - Visites privées

こんな学校がフランスにあるとは、私は知りませんでした。なんだか、異様なフランスの一面のように見えてしまうのですけど...。

学校は、パリ首都圏にあるサン=ジェルマン=アン=レー市とサン=ドニ市にあるのですが、上の動画で紹介さえている学校は、サン=ドゥニ市にある見事な建物で、広大な敷地(24ヘクタール)の学校の方。日本ではありえないゆな恵まれた環境に見えますが、ナポレオンが好きでなかったら学校生活はできないでしょうね。いたるところにナポレオンの肖像画が見えますので。

この学校で勉強するためには、年に2,600ユーロ(約36万円)の教育費のほか、制服も買う必要があります。第一に、難関の入学試験に合格しなければならない。

そのほかのメリットとしては、レジオンドヌール勲章のオルドル(騎士団)に入っている人が入れる豪華な老人オームなどというのもありました。でも、それだって空きがないと入れないのではないかな...。

こちらの動画が説明しています。

Les avantages de la Légion d'honneur




レジオンドヌール勲章について書いたのですが、偶然がありました。

少し前にルネサンス美術館になったエクアン城について書いたのですが(ルネサンス美術館となっているエクアン城)、1807年に皇帝ナポレオン1世の命で、レジオン・ドヌール受勲者の娘たちのための寄宿学校がエクアン城に設立され、移転するまでの150年間、城は学校として使われていたのだそうです。

前の記事:
レジオンドヌール勲章って、なんだか変... 2018/01/25

内部リンク:
★ 目次: 戦争、革命、テロ、デモ

外部リンク:
☆ Wikipedia: Ordre national de la Légion d'honneur » レジオンドヌール勲章
☆La grande chancellerie: Préparer sa remise de décoration
☆ Monnaie de Paris: Médaille et Rosette Légion d'Honneur
☆ Mouret Médailles officielles: Ordre de la Légion d'Honneur
Recevoir la Légion d'honneur, ça change quoi
☆ YouTube: Grands Reportages du 3 septembre 2017 Les filles de la légion d'honneur TF1
☆ Wikipédia: Maison d'éducation de la Légion d'honneur
☆ レジオン・ドヌール勲章(Légion d'honneur)(1) (2)
☆Le Parisien: “C'est avec des hochets que l'on mène les hommes”
ノーベル賞の賞金はいくら?



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