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2018/01/15
何度聞いても覚えられない単語と、一度聞いただけで覚えてしまう単語があります。すぐに覚えてしまうのは、その発音でよく知っている単語があるときが多いように思います。

例えば、教会でたまに見かけることがある「リットルlitre)」というのがあるのですが、この専門用語を記憶しておこうと思うまでもなく覚えました。

計量単位の「リットル」と同じ発音で、スペルも同じなのです。フランス語だというだけではなく、日本語でもリットルというのですから覚えやすい。

ただし、フランス語で「1リットル」というときの「リットル」は男性名詞ですが、教会にあるリットルは女性名詞という違いはあります。同じ発音ながらも2つの意味で使われる単語なわけですが、後者の方はラテン語の「lista(縁取り)」から来ているそうなので、語源は違うのでしょうね。


◆ 「リットルlitre)」と呼ばれる葬儀の黒い帯

フランス革命が起きる前のフランスでは、貴族などの名士の葬儀が教会で行われるとき、その人の紋章を入れた黒い帯状の布を張ったり、教会の壁に黒い帯を描いていました。

そういう帯を「litre(リットル)」と呼ぶそうです。

Wikipediaに入っている画像をお借りすると、こんな感じ。

Poullignac 16 Litre funéraire 2012.jpg
Église Saint-Martin de Poullignac


葬儀のときの演出です。悲しいことは黒で表現するのは万国共通なのでしょうね。日本でも、葬儀の時には黒い垂れ幕ではなかったでしたっけ?

... と思ったのですが、日本は黒と白の組み合わせでしたね。幾つか呼び名があるようですが、「鯨幕(くじらまく)」と呼ぶのだそう。そんな単語を私は使ったことがなかった...。



日本では弔事には白色を使う習わしだったのだそう。それなのに黒い色に弔辞のイメージが強くなったのは、西洋文化の影響からだという記述がありました。

喪服が黒と決まっているのも、同じ経緯を辿ったようです。そんなに古来から習慣が変えられてしまうものかな?... 喪服が白だと不便だったからという説明もありました。第二次世界大戦で葬儀が多くなったら、喪服を着る機会も増えて、そうなると白だと汚れが目立ってしまうので黒が好まれたとか。それだと何となく納得します。


話しをリットルに戻します。

この紋章が入った黒い帯は、外側にも描かれることがあったのだそう。


Église Saint-Joseph d'Escoire

リットルは教会内部で見ることが多いのですが、建物の外だと保存されていることが少ないからでしょう。修復したら壁に描かれていたのが出てきた、ということも多いようです。葬儀が終わったら、壁にフレスコ画のように描いた黒幕は残しておかないで、上から漆喰でも塗っていたのではないかと思う。

リットルという呼び名を教えてもらったのは、ずいぶん前のことでした。歴史の先生をしていた友人がブルゴーニュにある教会に残っていたリットルを見せに連れていってくれたのです。

今でもリットルが見れるのは非常に珍しいのだと言われたのですが、その後に教会に入ると、時々見かけています。でも、たまに、という程度でしょうね。


エクアンの教会

ルネサンス美術館となっているエクアン城を見学したときのことを書きましたが(ルネサンス美術館となっているエクアン城)、その後には、高台にある城から見えた教会にも行ってみました。ついでに行ってみただけなのですが、なかなか見どころのある教会なのでした。



教会の名前はÉglise Saint-Acceul。Saintと付いているので、Acceulという聖人を祭った教会なのでしょうが、Acceulという名前の聖人がいたとは知らなかった。綴りは「accueil(もてなし)」と似ているから、なんとなく奇妙。この聖人を祭っているのは、フランスでもエクアンしかないようです。

エクアン市のツーリストオフィスのサイトに、この教会の内部を見れる3D(と呼ぶのかな?)の画像が入っていました:
☆ 教会の内部のヴァーチャル・ヴィジット

こういうのをインターネットに入れてくれていると良いですね。写真を撮っただけだと、どういう風につながっているのか分からなくて、年月がたつと、どんなだったかを忘れてしまうので。


エクアンの教会に残っているリットル

私がエクアンの教会に入ったとき、真っ先に目に飛び込んできたのはリットルという黒い帯状の壁画でした。リットルの保存状態がかなり良いので、よく見えたわけなのですが、修復して残したようでした。










ここのリットルが気になったのは、私には馴染みのあるコンデ公の紋章だったからでした。



百合の花が3つのフランス王家の紋章の中央に、右下がりの赤い線が入っているので見分けられます。プリンスの血筋を持つブルボン家の家系。

でも、歴史上でコンデ公は何人もいました。どのコンデ公の葬儀だったのか?

調べてみると、フロンドの乱で名前が登場する有名な大コンデ(ルイ2世)の息子で、1696年にエクアン城を相続したHenri-Jules de Bourbon-Condé(アンリ3世 1643~1709年)だったそうです。




でも、コンデ家のお気に入りの城はシャンティーイ城だったはずなので、エクアンでコンデ公の葬儀が行われたとは考えられない。おそらく、城主様が亡くなったので、エクアンの教会でもミサをあげた、ということではないかな...。


ステンドグラスが美しい

16世紀前半、アンヌ・ド・モンモランシー大元帥((1493~1567年)はエクアン城を建築したのですが、それと同じ時期に教会も建てられたのだそう。

フランス革命で破壊されなかったステンドグラスが見事でした。最も古いものは1544年に制作されたと記されていました。

モモランシーの家族も描かれています。

下の右側で跪いているのが大元帥。



奥様のマドレーヌ・ド・サヴォワは、別の窓に描かれてしました。




別のステンドグラスに、何か奇妙なものが見えました。足元のところにあったのですが、何なのだろう?...




下は時代が下って18世紀のステンドグラスのようです。



コンデ家が教会の修復と建築を引き継いでからは、モモランシー時代のように貴重な建材は使わなかったとあったのですが、これも手抜きかな。中央部分はシンプル。でも、縁取りがとても美しいと私は思いました。





洗礼盤の彫刻も見事。


Fonts baptismaux

信者の人らしきボランティアの方が説明をしてくれたので、いつの時代のものか教えていただいたのだろうと思いますが、忘れてしまった...。

教会の見学を済ませると、近くにあるツーリストオフィスの庭でカフェをしていると教えられたので行ってみました。宣伝などはしていないので、教えてもらわなかったら見つけられなかったと思う。観光地なのに飲食店が少ないエクアンの町なので、住民の人たちが開いているようです。

私たちがジュースを飲んでいると、教会を案内してくださった男性が来たので、お礼になると思って誘いました。アルコール飲料を出す許可はとっていないカフェらしく、メニューにはジュースやお茶程度しかなかったのですが、彼はパナシェを飲むと言います。

パナシェを注文すると、お給仕の人は「そんなのはありませんよ」と答える。確かに、飲み物リストには入っていないのです。でも、住民同士のお友達でしょうし、いつも彼が来たときはそれを注文しているはず。

ちゃんと持ってきてくれました。パナシェはビールをレモネードを半々で割った飲み物です。これはアルコール飲料にならないのか、あるいは住民の人たちのために隠してストックしている飲み物だったのか...。フランスは大らかで良いです。




ブログ内リンク:
★ 目次: 宗教建築物に関する記事
★ 目次: フランスで感じるキリスト教文化
★ 目次: 色について書いた記事
★ 目次: フランスに結婚に関する風習、夫婦・家族関係、生き方

外部リンク:
Wikipédia: Litre funéraire
Wikimedia Commons: CategoryLitre funéraire
Encyclopédie, ou Dictionnaire Raisonné des Sciences, des Arts et des Métiers: LITRE
鯨幕の意味
鯨幕とは (お葬式の豆知識)
喪服はなぜ黒いの?いつからそうなったの?

Office de tourisme d'Ecouen: Eglise Saint-Acceul
Wikipédia: Église Saint-Acceul d'Écouen
actu.fr: L’église Saint-Acceul d’Écouen
Wikipedia: Maison de Condé » コンデ公
Wikipédia: Henri-Jules de Bourbon-Condé » アンリ3世 (コンデ公)
Château d'Ecouen, XVIe siecle.



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コメント
この記事へのコメント
慶弔と 色
>黒い色に弔辞のイメージが強くなったのは、西洋文化の影響からだという記述がありました

たしかに こんな意見がありました
http://ososhiki.bellco.co.jp/knowledge/%e9%af%a8%e5%b9%95%e3%81%a8%e3%81%af/

死装束って 日本では 白ですよね。。
切腹するときも 白
お遍路さんも  白


陰陽五行で 白は 西 
西は 仏教では 浄土

ちなみに 天皇制を理論武装した
天武天皇は 陰陽五行を駆使してますけど
陰陽五行で 天皇の暗喩 北極星は 北
北は 黒ですから けっしてけっして
不吉な色などでは ないのだ、、

鯨幕の 白 黒は またしても
陰陽五行で 解くと
五行の相生で 金(白) 生 水(黒)の
縁起物
https://www.bing.com/images/search?q=%e9%99%b0%e9%99%bd%e4%ba%94%e8%a1%8c%e3%80%80%e7%9b%b8%e7%94%9f&qpvt=%e9%99%b0%e9%99%bd%e4%ba%94%e8%a1%8c%e3%80%80%e7%9b%b8%e7%94%9f&FORM=IGRE

西洋で黒が 弔事の象徴とされる 理由
とっさに 思い浮かぶのが
黒死病。。。
2018/01/16 | URL | たかゆき  [ 編集 ]
教会内部の、ヴァーチャルヴィジットを拝見しました。いいですね、こういうの!
祭壇の絵画、どこかで見たような?? 
フランスのウイキベディア(自動翻訳で読みました)に、説明がありました。
 https://fr.wikipedia.org/wiki/?glise_Saint-Acceul_d'?couen
 『・・祭壇の背後にある印象的な絵画は、 ラファエルの 変容(Transfiguration ) の写しです。その元は、バチカン美術館に保存されています。
コピーは1738年からのもので、高さ約700cm 、幅280cmのものです。・・ 』
このラファエロ絵は、あまり観たくない絵の一つなのですが、こちらを観て思い出したのは、ラファエロの、「サンシストの聖母(システィーナの聖母)」。 
サンシストに描かれている聖バルバラと、大変有名な(もの欲しげな・汗)天使はとても素敵ですが、こちらの聖母子の雰囲気も、一向に好きになれません 。?
ラファエロの、「小椅子の聖母・大公の聖母・ベルヴェデーレの聖母・美しき女庭師」  は、ほれぼれしてしまうのですけれどね。。。(笑)


※Otiumより:
いただいたコメントを承諾して表示しようとしたら、間違って「削除」にしてしまったようです。ごめんなさい!!! コメントはメールで受け取っていたので、それをコピーして貼り付けました。
2018/01/17 | URL | フォルナリーナ  [ 編集 ]
お忙しいところ、ご丁寧にありがとうございました。
上記のURL が違っていますので、再度コピペいたしました。

https://translate.google.co.jp/translate?hl=ja&sl=fr&u=https://fr.wikipedia.org/wiki/%25C3%2589glise_Saint-Acceul_d%2527%25C3%2589couen&prev=search

大丈夫かな?? (汗)
2018/01/18 | URL | フォルナリーナ  [ 編集 ]
Re: 慶弔と 色
v-22 たかゆきさんへ

陰陽五行のお話しをたびたびお聞きして、とても興味を持つものの、相変わらず全く分かっていない私...。

陰陽五行の図を眺めていて、気に入ったのはこちらでした:
https://goo.gl/images/L54Rfc

>とっさに 思い浮かぶのが黒死病

私にとって、最悪のイメージは黒です。打撲でできたアザが青や赤だったら治るだろうと思うけれど、黒だったら朽ち果てると思ってしまう...。

お先まっくろ。
頭が真っ白。

日本で死を象徴するのが白だったのは、死に対して、それほど悪いイメージがなかったからではないかな...。キリスト教では、いつ来るのか分からない復活の日がありますが、日本だと、個人個人で勝手に生まれ変わるという意識がある...。私は、生まれ変わりたくなんかないですけど!
2018/01/18 | URL | Otium  [ 編集 ]
Re:
v-22 フォルナリーナさんへ

この教会については、どなたか熱心な方が書いたらしいWikipediaのページがありましたが、よく読んでいませんでした。

日本語訳へのリンク、ありがとうございます。自動翻訳というのは、眺めると楽しいのですよね。教会の「内陣」の意味で使われているchœurを「合唱団」と訳してしまっていたり♪

>祭壇の背後にある印象的な絵画は、 ラファエルの 変容(Transfiguration ) の写しです

この記述は気にしていなかったのですが、コピーでしたか。

エクアン城の方にも、レオナルド・ダ・ヴィンチの有名すぎる「最後の晩餐」のコピー画が飾られていたので驚いていたのでした。今までは気にしたことがなかったのだけれど、そういう風に昔に描いたコピーも飾られていたりするのだ... と知ったのでした。

ラファエロの絵画
心を和ませる非常にしい絵画と、お仕事で描いただけという感じのとがある、と私は感じます。ぽっちゃりした天使は好き。マリア様も、良い表情のがあるな...。
2018/01/18 | URL | Otium  [ 編集 ]
12 月初めにPCが ぶっこわれ 息子が直してくれたのはいいのですが
一部 ブログが消えてしまい、、

フォルなリーナさんに おききして また こちらにたどり着きました〜

単なる教会の装飾とおもっていた 壁の帯状の 飾り?にも
意味があるのですね〜
そういえば 京都のお寺の 塀にも
横筋がはいっているのをみて 義姉が お寺の格により
筋の数がちがうのよ、、と いってましたが
そのように たんなる飾りのようでも 意味あることが多いのですね〜

2018/01/22 | URL | katananke05  [ 編集 ]
Re:
v-22 katananke05さんへ

パソコンが壊れてしまったとのこと。大変でしたね。私はPCをいるるのが大好きなのですが、年中おかしくなるので調整に追われています。

>京都のお寺の 塀にも横筋がはいっている

何のことか分からなかったので調べてみたら、「筋塀(すじべい)」というのが出てきました。気にしたことがなかったな...。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AD%8B%E5%A1%80
2018/01/22 | URL | Otium  [ 編集 ]
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